かつお節アロマは空腹と食欲を強烈に刺激するものである

共働きで朝から晩まで忙しかった母だが、調理師という職業柄もあり、料理を作ることはきちんとしていたと今更ながらに思う。

夜遅くに帰宅して夕食の準備が始まるのは家中に漂う「だし」の香りで分かる。私はこの香りに吸い寄せられるように台所に行って準備を手伝っていた。

当時は「はぁ~いい香り!お腹空いてきた~!」としか思っていなかったが、管理栄養士となり、また人に料理を教える立場となった私はその香りが何なのか…と考えるようになった。

かつお節の香り成分というのは実は非常に複雑で、1つではなく300種類以上の有効成分の組み合わせで形成されている。
荒節の香りは主に燻臭(燻製のにおい:フェノール類)・肉質臭(魚肉のにおい:硫黄化合物)・焙乾香(香ばしいにおい:ピラジン類)の3種に分けられている。
枯節は、荒節の表面を削ることで「燻臭」の総量は減少するが、 カビの作用により一部の燻臭成分が変化し、よりマイルドな燻臭になる。
文章で書くと難しい話しに見えるが、あのかつお節アロマは私たちの空腹と食欲を強烈に刺激するものであることは間違いない。

そして母が私に一番初めに教えてくれたかつお節を使ったお料理が「即席味噌汁」だ。
即席味噌汁と言えば、今はだし入り味噌を茹で溶く物やフリーズドライの物が出回っているが、そういう物ではなかった。
仕事で家を空ける母が教えてくれた即席味噌汁の作り方は、『お椀に自家製味噌・刻みネギ・かつお節を入れてお湯を注いでかき混ぜる』という非常に簡単なもの。

シンプルだが、ちゃんとあのかつお節のいい香りがしてうま味も出ている。
寒い時期なんかは作り置きしてもらったお弁当にこの温かい即席味噌汁があるだけでお腹も心も温まった。
母からの作り方の注意は「熱いお湯に気をつけてね」だった。

そして今は同じ事を私の息子達に教え、お留守番の時はそれぞれ作って食べている。
食べたかどうかは私が帰宅した時に部屋の残るかつお節と味噌の香りで分かる。

 

 

山本理江
㈲明治館 取締役

管理栄養士・フードコーディネーター・ジュニアアスリートフードマイスター・6次産業化プランナー・「健康栄養cooking」主宰
出産を機にフリーランスの管理栄養士として栄養指導に従事。その後レシピ作成・メニュー開発、料理教室などを始めて徐々に活動の場を増やしていく。
現在は、栄養指導8000人以上、レシピ作成は数千点の実績を持つ。
栄養士業務の他、コラムの執筆、フードコーディネーターとして情報番組・テレビ番組の調理コーナー出演、ラジオ出演や料理番組のフードコーディネートも多数行っている。
また6次産業化プランナーとして新商品開発業務・また新商品開発のための講師活動も行う。